商店街から健康を考える

診療所のそばの細い通りに、戦後間もないころからあると聞く商店街があります。朝、診療が始まる前と、夕方や夜、診療が終わってから、自転車で通ります。朝は8時前から店を開けておられる魚屋さんや、夜、9時前まで惣菜の残りを売っておられる店もありますが、ほとんどの店は、日中、診療中に開けておられます。休日もあります。ですから、私が行けるとすれば、短い休憩時間の間だけで、買うものが限られ、ほとんど行けません。もともと私は、スーパーができてから閉店した小さな衣料品店で育ったので、こういう商店街には頑張ってほしいのですが。

朝から夜まで共働きで仕事をしている方々は、平日の日中に買い物にいくことはなかなかできないし、週末にスーパーにいくか、最近なら買い物以外の用途も兼ねて、夜にコンビニに行って済ませる方々が多いだろうと思います。ただ、コンビニやスーパーで働いている方々の健康が気になります。

毎日長時間営業しているスーパーでは、従業員の皆さんは交代制勤務で働かれています。シフト勤務で、朝早く出勤する日もあれば、午後から夜まで働く日もある。すると生活リズムが不規則になり、睡眠リズムも乱れやすくなります。まして24時間営業のコンビニでは、オーナーの方は休みをとりづらく、夜間にもっぱら働く方は、もともと眠りにくい日中に睡眠をとらなければならず、健康にとって好ましくありません。そうした方々のおかげで、消費者である私たちには便利な生活がもたらされているのかもしれません。しかしそれで、ますます私たちの生活が、不健康になってきてはいないでしょうか。

精神科の診療所に来られる患者さんに、だいたい1日の生活リズムを聞いています。すると、生活リズムが不規則な方が多いのです。そして食生活も、朝食をとらず、昼はコンビニの弁当、夕食は遅い“夜ごはん”という方が少なくありません。一日一食しかとっていないという方もおられます。心が元気でなくなったり不安定になったりすることの原因の一つに、こうした生活の問題もあります。うつ病を治療するのにまず必要なことは、薬ではなく健康的な生活です。雇われている身の上だから、自分の意志で生活リズムを決めることができないかもしれません。それでも、できるだけ睡眠時間を整え、朝食をしっかりとって夜食は軽めにするという生活を心がけていただければと思います。

その意味で、商店街のお店の方々のように、朝早く起きて夕方に店を閉める、休日は必ずとるという生活は、健康にはよいだろうと思います。そしてその日の朝に仕入れた新鮮な食材を摂ることは、からだにいいだろうと思います。心身一如(しんじんいちにょ)ということばがありますが、からだの健康は、こころの健康にもつながります。